午後の仕事は全く手に付かなかった。
それもそのはず、突然アノ主任から告白されて……衝撃の事実を突き付けられたのだから。
それに、もう一つ気がかりなのは……
(主任、大丈夫かな……風邪引かなければいいけど)
「小夜、大丈夫?」
余程ぼんやりしていたのか、尚子ちゃんが耳打ちして来る。
「えっ……あっ、うん……平気」
「ところで小夜、ミーティングで何かあったの?」
「えっ!? なんでっ!?」
「だって、入間主任さっきからチラチラずっとこっち見てるよ」
「えっ!?」
言われて主任の方を見てみた。
そしてまた主任の頭の上のハートとその横の数字を確認する。
99……
やはり、この数字は……
そんな事を考えて、ぼーっと見ていたらバッチリ目が合ってしまった。
私は気まずくなり、すぐに視線をそらす。
「なっ、何もなかったよ……」
誤魔化すように仕事を再開した。
ぶっちゃけ、これから主任とどう接していけばいいかわからない。
やはり、アノ数字は……
好感度なのだと思う。
私は確信した。
「ふ~っ……一通り片付いた! 小夜は?」
「私は、あと少しある」
まもなく終業時間を迎える頃、やはり私はなかなか仕事に集中出来ず残業確定となっていた。
「手伝おっか?」
「ううん、大丈夫」
周りの人も帰り支度をしだしている。
「あっ、そうだ尚子ちゃん」
私はあのゲームに詳しい尚子ちゃんに、どうしても聞いて起きたい事があったのだ。
「あのゲームって……」
「あのゲーム……プリラバの事?」
「うん、それなんだけど……あのゲームにキャラクターの好感度ってあるでしょ?」
「うん? もしかして、上げるの苦労してるとか? アレね~上げるの大変なんだよね~でも上げないと見れないストーリーとかもあるからさ~」
どちらかというと、上げるより私は下げたいのだが……。
「あっ、アレって上がる事はあっても下がらないの?」
「下がる?」
「うん、せっかく好感度上げても下がっちゃったりしないのかな~って……」
「え~っ……聞いた事無いけど? 何、まさか下がっちゃったの? 」
「う、ううん! 私、ああいうゲームするの初めてだから……どうなのかな~って……」
「攻略見てもそんなの無いみたいだよ……大丈夫じゃない?」
尚子ちゃんはスマホを見ながら答えた。
どうやらネットの攻略サイトを見ていたようだ。
「そ、そっか~、心配しちゃったありがとう」
「あっ、そうそうあとさ、プリラバは好感度80オーバーしないとキャラルートに入らないからね」
「ルート……?」
「そう、そのキャラとの特別イベントが観れたりするの、80以上じゃないと選択肢が出ないんだ」
「選択肢……」
そういえば、アノ選択肢が出たキャラは、私が一人だけスタート記念素材を使って好感度を上げたキャラだった。
つまり、私は今主任のルートに入ってしまっているって事?
どこまでこの現象が、あのゲームと酷似しているかはわからない(そもそも、システム自体は違うだろうし)それでもこの状況の解決策は、あのゲームの中にあると思ったのだが……