コレじゃあ本当に会議の意見交換だ。
私は、フラフラしながら会社に戻ろうと立ち上がった。
「長浜、まだ休んでた方が……」
「いえ、大丈夫です」
ともかく早くこの場から離れたい。
なんとかお店の出口に辿り着くと、外はどしゃ降りの雨だった。
(そういえば、出る時お母さんが雨降るとか言ってたっけ……)
呆然と空を見上げていると、不意に私の視界が薄暗くなった。
「会社まで走ろう」
主任は後ろから傘を差し出して来た。
「雨降るって言ってたから……」
「えっ……でも……」
小さな折り畳み傘は、私が入ると少し窮屈に思える。
お互いの肩が触れる距離で、私と主任は傘の中に収まった。
「ほら、行くよ……よーいドン」
背中をトンと押され、私達は雨の中を走り出す。
ほんの数時間前まで怖くてたまらなかった主任が、今はまるで別人で……
雨の中濡れる事も気にせずに走るその姿が、私にはとても以外に見えた。
「あっ、あの……」
二人で走って、なんとか会社に戻ったが主任のジャケットの右肩の当たりが大分濡れている。
「長浜、大丈夫か?」
どちらかというと、というよりどう考えても主任のが……
私を濡らさないように、ずっと傘をコチラに寄せていてくれた。
私は小さなタオルを差し出す。
「コレ、拭いて下さい風邪ひいちゃいますよ」
本当ならもっと大きなタオルが欲しいところだ。
「うん……僕は平気だから」
主任はそう言って濡れたジャケットを脱ぐと、何事も無かったようにオフィスへと戻ってしまった。