▶はい、喜んで
▶……少し考えさせてください
どうして……
何故?
私の頭の中は、色々な疑問でいっぱいだ。
まず、どうしてこの選択肢には『ごめんなさい』が無いのだろう。
最初の選択肢に至っては、居酒屋の注文を受けた店員の掛け声だ。
主任の方に視線を移す、改めて見ると確かに主任はイケメンだ。
背も高いし、見た目はカナリ私の好みだ。
だけど──
やはり、いつものガミガミ怒鳴って来る主任しか私には思い浮かんで来ない。
ベタベタな赤いバラの花束を私に差し出し、顔を真っ赤にして必死な主任とか……今の状況は私の想像の上を行き過ぎている。
「突然で驚いてるとは……思う……でも、実はこの部署に配属された日から、君に一目惚れしてしまったんだ」
あまりの事に私はクラクラして来た。
思考が追いつかない。
主任の顔がぐるぐる回る。
「長浜?」
そして……
本当にその場でぶっ倒れた。
コレはきっと夢だ。
夢に違いない。
そうじゃなければ、アノ主任が私に告白とか……しかも、少女マンガみたいにバラの花束を抱えてとか……
あるワケが無い!!
いや、そんな事が本当にあったら世界の終わりだ。
「……長浜?」
心配そうに主任が顔を覗き込んで来る。
まだ、夢から覚めてないのだろうか?
「大丈夫か?」
「あれっ……私……」
ようやく、目が覚めた私は何故かイタリアンレストランのソファで横になっていた。
「急に倒れるからびっくりしたよ、まだ少し横になってなさい」
コレは夢?
現実?
「すまない、僕があんな事急に言ったから……」
「あんな事?」
ふと、足元の方を見るとまだそこにはバラの花束が鎮座していた。
夢じゃなかったの?──
主任を見ると、もうアノ選択肢は消えていた。
私があまりの事にフリーズしたからだろうか?
「返事は急がないから……」
どうやら、世界は終わりを迎えるらしい。
「長浜も僕の事をまだよく、知らないだろうし」
知るも何も、ならべく関わらないようにして来たのだ。
「その……いつもキツく当たってすまなかった……好きだって思うと上手く接する事が出来なくて……」
普段はあんなにエリートが鼻につく、偉そうな振る舞いの主任がまるで借りて来た猫みたいになっている。
「僕は、その……長浜が……」
主任の頭の上のハート横の数字は、いつの間にか99になっていた。
「あの! 私、この件は一旦持ち帰らせて頂きたく思います!」