うんやっぱり、コレは相当目が疲れていたんだろう。
更に睡眠不足で、さっきは寝惚けていたに違いない。

慣れないゲームなんてしたから……

私はようやく落ち着いて、始業時間を迎える事が出来た。

「あれ? 小夜今日メガネ?」

「あっ、うん……」

「珍しいね~コンタクトは?」

「なんか目の調子が悪くて入らなくて……」

「アレ……? でも、そのメガネ」

尚子ちゃんは私の顔を覗き込んだ。

「もしかして、主任とお揃いじゃない?」

「えっ……?」

私は慌ててメガネを外し、よく見てみた。
憧れだったブランドの奮発して買ったメガネ、バチの部分やブリッジに綺麗な細工がされていて、気に入って買ったモノだったのだが……

言われてそちらをチラっと見ると、確かに普段メガネなんてかけていないはずの主任が今日は何故か眼鏡をかけていた。

念の為持って来てはいるが私は普段コンタクトの為、メガネは家でしかほぼしない。

まさか、私と同じメガネの人がいるなんて……しかもそれがよりによってアノ主任とか……

「うん多分同じヤツだよ、その細工みたいの主任のヤツにも入ってたもん」

もしや、主任も普段はコンタクトとか?
それで今日はたまたま目の調子が悪かったとか?
今日に限って主任まで眼鏡とは……

しかし、メガネに気づくとか……
そこはやはり、観察眼の鋭い尚子ちゃんだからこそかもしれない。

「……長浜」

不意に後ろから声をかけられる。
先程聞いたばかりのこの声、振り返るとそこにいたのはいつの間にか後ろに立つ主任だった。

「は……い……」

私はビクビクしながらも、尚子ちゃんに言われた事が気になって主任のメガネを凝視した。

確かに、特徴的なブリッジやバチの部分の細工。私と主任は同じメガネだ!

「オマエ……今日はメガネなんだな」

これはやはり、主任も同じ眼鏡だと気が付いた可能性は高い。

私はなんともいたたまれない気持ちになって、すぐに俯いた。

「……例の新しい取り引き先の件で、今日ランチミーティングしたいんだが」

「あっ、はい……わかりました」

気まずい──
とても気まずい。

さっきの態度も、多分変に思ったんではないだろうか?

更にお揃いのメガネ。
これじゃあまるで……私が主任を好きみたいに思われてしまう。
こんなにも苦手な人はいないくらいなのに……

「小夜、災難だね……」

肩を竦めて尚子ちゃんがコソっと私に言った。

ホント、今日はツイていない日だ。
朝からバタバタして、お昼まで苦手な主任と一緒とか……

「はぁ~っ……」

もうため息しか出て来なかった。