「いえ、それよりも何も子どもたちのこと、お手伝い出来なくすみません。夕食の準備、お手伝いします」
 のぞみは首を振って立ち上がった。
 あやかし園の夕食は、普通よりも少し遅い午後九時ごろだ。事務所を出ると、ふた部屋続きのふすまが取り払われて座卓が一直線に並べられている。その周りで子どもたちが、ご飯を今か今かと待っていた。
 少しだけぞぞぞときかけたのぞみだけれど、それよりもその光景に懐かしい思いを抱いで胸が温かくなるのを感じていた。十八歳までを過ごした施設では、こんな風にみんなで集まってご飯を食べた。施設を出て短大の学生寮に入ってからは、食事の時間は決まっていたものの基本的には個々だったから、こんな風にみんなで一斉に食べるのは久しぶりだ。
 ご飯自体は街の弁当屋で毎日お弁当を頼んでいるようだった。子ども用が二十、大人用が二つ。それをサケ子と二人で並べていると、紅が帰ってきた。
「紅さま、お帰りなさい!」
 途端に子どもたちが紅のもとへ駆け寄って、足に絡みついたり背中に飛びついたりして、部屋は大騒ぎになった。