「私は紅(こう)、コウと呼んでくれ」
雇用契約を結んだあと、さっそく職場見学をということになった。いつのまにか時刻は午後五時半を過ぎて、陽が傾きかけている。
アパートを出て本殿への小道を紅について歩きながら、のぞみは不思議な感覚に襲われていた。ここへ来てからもうずいぶんと時間が経ったような気がする一方で、あっという間だったようにも感じる。
「コウ…」
ぼんやりとしてのぞみは呟く。
けれど、目の前で紅が微笑んで「そう」と頷いたのを見てすぐに慌てて首を振った。
「そ、そういうわけにはいきません! 目上の人を下の名前で呼ぶなんて…」
「うちは、そういうのは気にしないんだよ。園には君の他に保育士がもう一人いるんだけど、その子も私を名前で呼ぶよ?」
全力で否定をしたのぞみに、紅は少しだけ残念そうに言った。それでも、そのもう一人の保育士と今日雇われたばかりののぞみとは立場が違うような気がする。
雇用契約を結んだあと、さっそく職場見学をということになった。いつのまにか時刻は午後五時半を過ぎて、陽が傾きかけている。
アパートを出て本殿への小道を紅について歩きながら、のぞみは不思議な感覚に襲われていた。ここへ来てからもうずいぶんと時間が経ったような気がする一方で、あっという間だったようにも感じる。
「コウ…」
ぼんやりとしてのぞみは呟く。
けれど、目の前で紅が微笑んで「そう」と頷いたのを見てすぐに慌てて首を振った。
「そ、そういうわけにはいきません! 目上の人を下の名前で呼ぶなんて…」
「うちは、そういうのは気にしないんだよ。園には君の他に保育士がもう一人いるんだけど、その子も私を名前で呼ぶよ?」
全力で否定をしたのぞみに、紅は少しだけ残念そうに言った。それでも、そのもう一人の保育士と今日雇われたばかりののぞみとは立場が違うような気がする。