赤、黄、だいだい色の葉の色に染まる山神神社の参道に、この辺りの全てのあやかしが詰めかけて、手を繋いで本殿に立つ紅とのぞみを祝福している。
 のぞみはそれを潤んだ瞳で見つめていた。
 夫婦になる時に特別なことはしないというあやかしたちは皆、初めて見る婚礼の儀式に興味津々のようだった。そしてそれぞれが婚礼にふさわしいと考える衣装を思い思いに身につけている。
 河童一族は真新しいスクール水着に身を包み、赤舐め一族はノリの効いた作業着だ。
 こづえとかの子はお揃いのウエディングドレスを着て、サケ子はなぜかチャイナドレスだった。
 唯一まともな格好をしている鬼一家の中に、今日謹慎を解かれたばかりの一平の姿もあった。茶色かった髪を黒く戻して短く切り、リクルートスーツ姿の彼は以前より少し大人びて見える。
 さながら和製ハロウィンパーティーのようなこの光景に、のぞみの胸が熱くなった。
 本当のところ先ほど行われた婚礼自体も人間のものとはかけ離れていたような気がしたが、夫婦になりましたということを誰かに報告するのが婚礼だとすれば、これでいいのだとのぞみは思う。