あやかしであるサケ子の意見にしかしのぞみは納得できなかった。単純な何かなんてさっぱり心当たりがない。
 それでも…と言いかけるのぞみの言葉は子どもの声に遮られた。
「せんせー、おむかえ来たー!」
 もうそんな時間かと思って振り返ると鬼の子だった。のぞみは、はいはいと返事をして、とりあえず紅のことを頭から追い出した。
 そして三人いる鬼の子たちを連れて玄関へ向かう。外にいたのは母親でも父親でもない鬼だった。初めて見る顔だと少しだけ訝しむのぞみの手を離れて、子どもたちが駆け出す。そしてその鬼に飛びついた。
「一平兄ちゃん!!」
 なるほど兄かとのぞみは納得する。そう言われれば両親よりは少し若い。人間でいうとのぞみと同じくらいだろうか。
 それにしてもおしゃれだった。
 すらりとしたデニムのパンツに形のいい白いシャツ、首にはスカルモチーフのアクセサリー、茶色い髪にはふわりとパーマまであたっている。そこにツノがなければ街を歩く若者と見分けがつかないくらいだ。