のぞみがこづえに小言めいたことを言ってしまったことを本当に後悔したのは、次の日だった。こづえがいつもの時間にアパートにかの子を預けにこなかったのだ。
 幸いあらかじめそれを見越していた紅が保育園前でかの子を見つけて連れてきてくれたが、のぞみはひどく落ち込んだ。
 開園前の時間はかの子も機嫌よく過ごしているから、連れてこないでほしいなどとは思っていない。だがルールを守れと言われたから、こっちもダメだと思ったのだろう。いやそれよりも、うるさいことを言ったのぞみには、かの子を任せたくないと思われたのかもしれない。
 紅は、ヘソを曲げているだけだから気にするなと言うけれど、そう簡単にはいかなかった。働く親に安心して子どもを預けてもらうのが保育士の役割だというのに、追い詰めるようなことを言うなんて。