「クソっ…………」

先輩はしょぼくれてその場に座り込んだ。
体を実際目の前にしたら、もしかしたらどうにかなると思ったのかもしれない。

私は、落ち込む先輩を見て罪悪感が込み上げて来た。

先輩がぬいぐるみになってしまったのは、やはり私のせいなんじゃないかという疑念がどうしても拭えない。

まだ確定ではないし、なんの証拠もないから実際はわからないのだが……

ただ、何となくタイミングがどうしてもピッタリ過ぎる気がしてならない。

だとしたら、コレは私の責任だ。
申し訳ないし、なんとか先輩を元に戻さなければ……
そう、私は改めて決意を固めた。

「あっ、アノ先輩! 実は、こうなってしまったのは……」

「やはり、コレは……アノ予言書のせいなのかもしれない……」

先輩は私のセリフを遮り、何かを考え込む様なポーズをしていた?
?が付いてるのは、先輩はコアラのぬいぐるみなので手足が短く実際は良くわからないからだ。

「あっ、あの! 先輩……」

「アアアァァァっ!! やはりアノ予言の書が俺の力を増大させ、暴発させたのか!? コレもヤツらの企みなのか!?」

聞いてない。
もう完全に自分の世界に入ってる。

それから先輩は、自分の学校のカバンやら机やらを何やらゴソゴソと漁りだした。

なんだか私はもう、ココにはいないモノとされてるのかもしれない。
このまま帰ろうかとすら思った。
すると……

「月見里っ!」

「は、はいっ!?」

突然名を呼ばれ、思わず体がビクッと反応した。

「お前も探せ……」

「えっ? ナニをです?」

「だから! 予言の書だっ!!」

「予言の書……? って、だから何なんです?それ……」

「予言の書は予言の書だ! 昨日までは確かにあった……昨日…………」

そう言いかけて、先輩の動きが止まる。

「学校……学校だ…………」

「学校?」

そういえば、そろそろ私も行かないと遅刻してしまう時間だ。

「予言の書は学校にある! 俺を学校に連れて行けっ!!」

「えっ……私が先輩を、学校にですか?」

「他に誰がいるんだ?」

いやいや、小さいマスコットとかならまだしも、もふもふさんはまあまあの大きさがある。
こんなモノ学校に持って行くなんて……

だが、ぬいぐるみになってしまった先輩をこのままにしておく訳にもいかない。

先輩は、正体不明の予言の書だかなんだかのせいにしているが、やはり私のせいなのかもしれないし……

仕方なく再度スポーツバッグに先輩を詰め込み、今度は学校へと向かった。