病院の自動扉を抜けると、なぜだか私の心臓はバクバクと脈を打ち始めた。

入口を入ってすぐの病院案内板を確認すると、302号室はどうやら入院病室らしい。

「入院……? 沢渡さんご家族の方が入院されてるんですか?」

「聞いた事ないが……確認しよう」

犬神先輩はまっすぐに受付へと向かい、私はその後に着いて行く。

「すいませんあの、この病院の302号室に沢渡さんって方……いますか?」

「沢渡さんですね、少々お待ちください」

そこに沢渡さんの家族や、誰か沢渡さんに関係する人がいるのか、まずは確認する方が確かに良いだろう。

「もしかして、アナタ犬神くん?」

受付の人が調べてくれているのを待っていると、不意に私達は後ろから声をかけられた。

「……はい」

「やっぱり! 私、沢渡さんの担当をしていた藤乃(ふじの)って言います」

若い綺麗な看護士さんは、そう言って名札を見せてくれた。

「はぁ? 担当?」

「この度は、本当に急な事で……」

私達はワケがわからず、顔を見合わせた。

「アノ、これ……もし友達の犬神くんって男の子か、月見里さんって女の子が来たら渡して欲しいって頼まれてたの……」

山中さんはポケットから、白い封筒を犬神先輩に手渡した。

「女の子が来たらって言うから、彼女?って聞いたら違うって笑ってた」

少し、山中さんの瞳が揺らいでいる。
なんだろう、この空気……
コレじゃ、まるで……

「あっ、アノ……沢渡さんは? 沢渡 颯さんは、ココにいるんですか?」

「……もしかして、アナタ達…………」

山中さんは、ハッとした表情をして私と犬神先輩を交互に見てから小さく息を吐いた。

「沢渡 颯くんは────」





拝見
犬神蓮様
月見里 美織様

こうして手紙を書くのは初めてでなんかちょっと緊張するな~、でもちゃんと伝えたいから頑張って書きます。

元には戻れたかな?
戻れてるよね、だってあれは僕が効果に期限を付けていたから、僕のこの体の終わりまでって……

ずっとお前には言って無かったけど、僕は昔からこの体と相性悪くてさ、去年とうとう余命とか宣告されちゃったんだよね。
引越しも家族が病院の側のが看病しやすいからって事で、お前にはなんも言ってなくてホントゴメン!
学校も以前より行く事が出来なくなって、あんま相手してやれなくなった……寂しいか? 僕は寂しい……
で、やっぱり僕の心残りっていったら、蓮の事なんだよね、なんせお前友達どころかまともに話せんの僕しかいないし、もし僕がいなくなったら一人になっちゃうじゃん!
そしたらさ、お前と仲良くなりたいっていう子が突然現れてさ、彼女は良い子だよ。
お前の中身がわかっても、きっと側にいてくれる。
月見里さんもごめんなさい。
こんな事に巻き込んで、意地悪な事まで言って、なんかちょっとだけ蓮を奪われるのが悔しくなって、あんな事を言ってしまいました。
勘違い……じゃないよね?本当はちゃんと知ってたよ。

もう心残りはありません。



最後に、月見里さん
犬神 蓮の友達になってあげてください!

沢渡