私は学校へ行く準備をすると、ジャージ姿の先輩と犬神家へ向かった。

「もふもふさん!」

すぐに先輩の部屋を確認すると、昨日先輩が座っていた椅子の上にちょこんともふもふさんが座っていた。

「よかった……無事だったんだな」

私がもふもふさんを抱きしめるのと同時に、先輩が言った。

「犬神先輩、もふもふさんを心配してくださってありがとうございます」

「少しの間だったが、オレの体だったからなそいつ」

先輩は照れくさそうに笑って、私が抱きしめたくてっとしたもふもふさんの頭を撫でた。

「はい……あっ、でも……」

もふもふさんも見つかり犬神先輩は元に戻って、めでたしめでたし……
なのだが、私には一つ気になる事があった。

どうして急に元に戻ったのか……。

「犬神先輩、沢渡さんに会って聞きましょう」

「沢渡に? アイツは学校に来ない事のが多いからな……今日は旧校舎にだっているかわからん」

「そ、そうなんですか!?」

でも確かに、私が先輩を調べていた時も一度もお目にかかった事が無かったわけだし、沢渡さんはカナリのレアキャラだったのかもしれない。

「何か連絡方法は? メッセージアプリとか、SNSとか……」

「オレがそんなモノやっていると思うかっ!? そんなモノをやったらすぐに組織にオレの事がバレてしまうだろ!」

「はいはい……そうでしたそうでした」

そういえば、昨日ちょっとまともな事言うから忘れていた。
先輩はこんな人だった。

「携帯の番号なら知っているぞ」

犬神先輩はスマホを取り出し、沢渡さんの電話に何度かかけてみたが生憎電話は圏外だった。

「幼なじみなら、沢渡さんのご自宅とかは?」

「以前は隣に住んでいたが去年、突然引越して……引越し先は知らん」

「幼なじみなのに聞かなかったんですか?」

「聞かなかったんじゃない! アイツが教えてくれなかったんだ」

犬神先輩は、少し寂しそうな顔をした。

なんだろう、胸騒ぎがする。
今朝見たアノ夢──
先輩が元に戻ったのは、多分沢渡さんが関係していると思う。

「そういえば……」

昨日、渡されたあのノート『予言の書』確か、沢渡さんが何かあったらノートを見るように言っていた。

私は、カバンの中に入れていたノートを取り出し、パラパラと開いてみる。

すると、ノートの最後のページに鉛筆で書かれた様ななぐり書きがあるのを見つけた。

「こんなの、前は無かった……」

ノートを覗き込んだ犬神先輩が言った。
そこには……

中央病院 302号室にて待つ 沢渡──

たったそれだけの短い文があった。

「中央病院……302号室? 一体、ココに何が?」

私は犬神先輩と共に、中央病院へと向かった。