今、私は体がぬいぐるみとはいえ、大好きな人と二人きりでベッドにいるワケだ……。
なんだか急に恥ずかしくなってきた!
さっきまで、あんなにモギュモギュ抱きしめていたのだって、冷静に考えてみて先輩が元の体だったら絶対に出来っこない。
「あっ、あの~先輩……お布団敷きますか?」
「はぁ? 今ベッドで寝てる」
「いえ、あの、そうじゃなくてですね……別々に寝た方がいいかと……あっ、なんなら私が布団で先輩がベッドでもいいですし……」
「別に狭くないからいいだろっ?」
「えっ、ちが、そういう問題じゃなくて……」
「じゃあどういう問題なんだ?」
「それは……えっと…………」
なんだか急に意識してしまって、一緒に寝るとか出来る気がしないからです~……とは、さすがに言いづらい。
それに──
多分、私の気持ちはまだ先輩にはバレていなさそうな気がするし……。
「お前、このぬいぐるみいつも抱いて寝てんじゃないのか?」
「な、何故それをっ!?」
「そりゃあお前……こんだけ汚れてたらそうだろ? 手垢もスゲーし綿も偏ってるし……」
「もっ、申し訳ない!!」
そうだよね、よりにもよって新品とかならまだしも、こんな年季の入ったぬいぐるみの体になるとか有り得ないよね……
つくづく先輩に申し訳がない。
「つまり、大切にしてるって事じゃないのか?」
「えっ? ……あ~っ、もふもふさんは小さい時におばあちゃんに買ってもらったんです、一昨年、亡くなって形見みたいなモノでもあったりで……」
そう私が言うと、もふもふさん、もとい犬神先輩はベッドの端に座る私の方へトコトコと歩いて来て膝の上に座った。
「なっ……ど、どうしたんです!?」
「やっぱり、大事なモンなんじゃねーかよ」
「そうです……けど」
意識してしまっている分、なんだかとてもこの状態がドキドキしてしまっていた。
「お前もオレも、沢渡に妙な事に巻き込まれたって事だろ」
「えっ……でも、私は……」
私は他でもない、沢渡さんの思惑にまんまとハマって、犬神先輩をぬいぐるみにしてしまった張本人だ。
「お前だって、人質……いやぬいぐるみ質取られてるようなもんだろ?」
「ぬいぐるみ質……ですか?」
「そうだよ」
「ぷっ……! ふふっ……アハハハ」
「おっ、おいっ! なんか俺、おかしい事言ったか!?」
「だって、先輩ぬいぐるみ質って……」