「だぁかぁらぁ~っ、このノートはホントにただの普通のノートだって~、レンレンがこうなったのはおまじないのせいだよっ!」
────っ!!
「おまじない? なんだそれ?」
「えっ? おまじない、月見里さんの好きなヒトと……」
「わぁぁぁぁぁぁ────っ!!」
私は大声で叫んだ。
何、この人!?
ちょっとイケメンだとかって気を抜くと、とんでもない事を暴露されるかも!?
「なんだ!? どうした、月見里?」
私の雄叫びにビビった犬神先輩は、あたふたとしていた。
「なっ、何でもないですっ!!」
って、アレ?
私、沢渡さんに名前教えたっけ?
「……あっ、アノ……私、名乗りましたっけ?」
「いや、でもキミ、月見里 美織さんでしょ?」
「そう……ですけど……」
「レンレンのストーカーの……」
私は、思わず沢渡さんの口を両手で塞ぐという暴挙に出てしまった。
「なんで知ってるんです!?」
「僕はね、何でも知ってるよ! 魔法使いだからね……」
沢渡さんはそう言って、いたずらっ子みたいな笑みを浮かべる。
普通の人なら何言ってんだってトコだけど、沢渡さんみたいな超絶美形がそう言うと本当の事な気がしてくる。
「スカートがどうかしたのか?」
相変わらずマヌケな顔で、犬神先輩は私達を見比べていた。
良かった……。
犬神先輩にはちゃんと聞こえて無かったみたいだ。
「ど、どうもしないです! 大丈夫ですから」
「あっ、そうだ~レンレン、また新しい本手に入れたよ~読むでしょ~?」
「何っ!? ホントかっ!!」
沢渡さんは奥の本棚から一冊の本を取り出し、それを先輩の前に置いた。
本のタイトルは──
『竜殺し(ドラゴンスレイヤー)への道』
「よぉしっ!! この本を読破し、オレは竜殺しの名声を手に入れるぞっ!!」
竜って……この世界にいるんだろうか?
何だかよくわからないけど、先輩は本に夢中になっていた。
「座って話そうか」
私は沢渡さんに促され、教室の隅にあった椅子へと座らされる。
「僕と蓮は幼なじみでね、昔からこうして魔法や剣の世界の話をして気があったんだよね」
驚いた。
クラスメイトどころか、二人は幼なじみだそうだ。
「でも、僕は生まれつきあまり体が強くなくてね、学校も休む事が多くて、今もほとんど通学出来てない」
そこで私は合点がいった。
沢渡さんみたいなイケメンの友達がいたら、私が先輩の事を色々と調査してる時にその情報を知り得ないはずがない。