「……きろ……おいっ……おき……ろっ……」
声……?
誰かの声が遠くで聞こえる。
なんだかわからないが、私の頬にふわふわな感触が触れた。
ぽふぽふ
ぽふぽふ
なんだろう、まるで大きな綿毛を押し付けられている様な感覚。
ぽふぽふぽふ
ぽふぽふぽふ
ぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふ……
んっ……
ちょっとしつこいな。
ぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふぽふっ!!
いっ、痛い……
痛い痛い……ってばっ……!
「おき……ろっ!! 起きろ─────っ!!」
「……っひぃっ!!」
耳元で爆音が聞こえ、私は飛び起きた。
心臓はバクバクと、私の体中に急いで血液を送りまくっている。
「……やっと起きたか」
足元の方から声がした、さっきからずっと聞こえて来ていたのと同じ声。
やがて、声の主は私の上へと這い登る。
「────っ!!」
「おいっ! オマエっ!!」
私は呆然と、声を発しているその生き物を凝視していた。
「なっ……何っ!?」
毛むくじゃらの灰色の薄汚い、生き物!
こんな生物、少なくとも私の知る限りいない。
「貴様っ……! ダークベルベットプリズンの幹部かっ!?」
「………………?」
何言ってんだろ、この汚いもじゃもじゃは……
「この俺の力、ライトスターダストセイバーを恐れ、こんな体にする攻撃をして来たのだろ!?」
……何言ってんのか全然わかんないけど、めっちゃマヌケな顔の動物だな~……目と目が超離れて、なんか全体的に歪んでるし、鼻もなんか真ん中からちょっとズレてる。
う~ん……
でも、なんか見た事ある様な……あっ!コアラに似てる。
うん、って……
そういえば、私のモフモフさんは……?
モフモフさん……
「…………も、モフモフさんっ!!?」
私は今この目の前でしゃべる汚いもじゃもじゃが、モフモフさんだという事にようやく気づく。
「モフモフさん!? 誰だそいつは!? オレは、混沌と漆黒の翼を持つソルジャーナイト、犬神 蓮だっ!!」
えっ? 今なんて言った、このもじゃもじゃ。
もといモフモフさん。
犬神 蓮──
そんな、まさか……
聞き間違い?
「…………あの……も、もう一度お名前いいですか?」
「コホンっ……だから混沌と漆黒の……」
「あっ、ううん違います! そこじゃなくて……」
「だから、ソルジャーナイト……」
「そこでもなくて……その先の……」
「犬神 蓮だ」