「先輩! よくこの状況で寝れますね!? っていうか、誰の為にこんなトコまでわざわざ来てると思ってるんですっ!?」

「あ~っ……だから、大丈夫だって~起きてる起きてる」

「…………ココに置いて帰っていいですか?」

「あぁ──っ!! 起きてるっ!! 起きてるからっ!! ドコだっ!? ヤツらはドコに潜んでいるっ!?」

ジトっとした目で先輩を見つめると、急にヤル気を出したように先輩はバッグから頭を出してまた変な構えをしている。

「ハァッ……ホントになんで私、こんな人好きだったんだろ……」

「んっ? 今なんか言ったか?」

「いっ、いえいえ、何も……あっ! それより先輩、ほらココじゃないですか!?」

辿り着いた2階廊下の奥。
そこにあった古い教室を、私は指さした。

「……と、とりあえず、開けてみます?」

「あっ、ああ……」

大きく一つ息を吐くと、私は扉をまずノックしてみた。

もちろん、中から返答は無い。
それはそうだろう。
形式的にノックはしてみたが、こんな場所に誰かいるとは思えない。

次は横開きの扉に手を掛け、思い切り横に引いた。

中には誰もいな────くない!?

それどころか……

「やあ、遅かったね」

扉を開けてすぐ目の前に、突然人が現れた。

「ひっ!! ギャァァァァァ────っ!!」

悲鳴を上げるのと同時に、私はその場で思わず尻もちをついた。

私の目の前に突然現れたのは、理科室なんかによくある人体模型だったのだ。

「……? ちょっとキミ、大丈夫?」

「なっ、ななななっ……だっ、だだだだ誰っ!?」

人体模型の後ろにいた人物が、慌てふためく私の手を取り立ち上がらせる。

「僕? あっ、そっかキミとははじめましてだったね、僕2年の沢渡 颯(さわたり そう)です。よろしくね」

そう言って彼は微笑んだ。


突然目の前に人体模型がいた事にも驚いたが、それよりも私が驚愕したのは……

沢渡さんが、とんでもない美形である事にだ!

本当に、こんな人がこの学校にいたのかと!?
お人形さんみたいに整った顔立ち、陶器みたいに綺麗な肌。
キラキラとした金色の髪。
一体、この人何者!?

「あ、あの…… そ、それでその沢渡さんは、一体ココで何をされてるんです?」

「えっ? あー、僕はねオカルト研究会の会長なんだ、そしてココはその部室」

「お、オカルト研究会……? そんなモノあったんですか? ウチの学校に……」

「あるよ~、まっ、部員は僕だけなんだけどね」

私は改めて教室を見回した。