「笑うな! とか言われると無性に笑いたくなる事があるだろ? アレだ!」
「いやいやいや、そこは嫌でも何がなんでもガマンしてくださいよ!! 見つかったらどうするんです!?」
「見つかったところで、誰が信じんだ? ぬいぐるみに魂が宿ったなんて……」
「それは、そうかもですけど……特殊な機関とかに連れてかれて解剖とかされちゃうかもしれませんよ?」
「特殊な機関……ヤツらか!? ダークベルガモットかっ!?」
また名前違う気がする……。
「そういうトコにだけ食いつくの止めてください」
不毛な争いをしていたら、いつの間にか私達は例の旧校舎に着いていた。
入口には『立ち入り禁止』と書いた貼り紙が一枚貼られている。
古い木造の二階建ての建物だ。
「は、入りますよ……?」
「あっ、あぁ……」
私は自分を落ち着かせようと大きく一つ息を吐いて、錆び付いたドアノブに手を掛けた。
残念ながら、扉は鍵が──開いていた。
もしかしたら鍵がかかっていて、入れない出直しですね、あ~あ……という展開を期待していたのだが、しかし扉はなんて事はなく開いてしまった。
先輩もどうやら同じ気持ちだったようで、開いた途端にバッグに顔を引っ込めて中から「開いて良かったな」と、震えながら言っていた。
意を決して校舎に踏み入ると、ミシリという木の軋む音が辺りに響く。
左右を確認するが、もちろん人の気配は無くカビ臭い匂いが鼻を掠めるだけだった。
「2階の奥……」
入ってすぐ目の前には階段があり、上の方は暗くて良く見えないが2階へと続いてはいるようだ。
窓から外の光が入り、うっすらと周りを照らしてはいるがやはり中は薄暗い。
転ばない様に細心の注意を払い、廊下から階段へと移動して一段一段ゆっくりと老朽化した階段を手摺を伝い昇っていった。
「こんなトコ、一体何があるっていうんだろう……」
実際のトコは、何も無いかもしれないのだが……
なにせ、よくわからない変なノートに書かれていたイタズラ書きみたいなモノだし……。
それでも、今の私達には藁にでも縋り付きたいから仕方ない。
んっ?
私達……?
ふと、私はバッグのファスナーを開けた。
中では先輩が、めっちゃ爆睡している。
「ちょっとっ!? 何思いっきり爆睡してるんですっ!? 私今、怖い思いしてるんですよ!? めっちゃ緊張するトコですよ今っ!?」
「あっ……あ─っ……まだ大丈夫なんで……」
コイツ、寝ぼけてやがる。