「物じゃなく、モノだっ!! こんなボロのぬいぐるみじゃなくて、神とか悪魔とかそういった人ならざるモノになりたかったんだよっ!!」

「はぁ…………」

「だからぁっ! 間違えてこんな状況になったんだよっ!!」

「あの~……先輩、一ついいですか?」

私はさっきから頭に完全に血が上りすぎて、エキサイトしている先輩に聞きたい事があった。

「なんだ!?」

「そもそも、このノートって……書いたら願いが叶うノートなんですか?」

「はっ?」

「いや、だって『予言の書』って事は、単に未来が予測出来るノートなんじゃないんですか?」

突拍子の無い事だが、もし万が一このノートが本物だったとして、本当にこのノートの使い方はコレで合っているのだろうか? 私はどうしてもそこが気になっていた。

「いやっ、だから書いた事がその通りになるから『予言の書』なんだろっ!?」

「それなら単純に願いの叶うノートで、良くないですか? その買った相手から、そういう風に教わったんですか? 書いたら願いが叶うって……」

先輩は少しの間黙って考え込み、やがて答えを見つけだした。

「……言われてない! クソぉっ!! オレは騙されたのかァァァっ!?」

いや、そもそも騙すも騙さないも、使用用途すらよくわかっていないし……
だいたい、そんなワケのわからないモノ普通なら買うワケがない。

でも、なぜだかわからないが私は無性にそのノートが気になっていた。

「この字……どこかで…………」

それは、ノートの表紙に書かれた『予言の書』という文字だ。
どこかで、見覚えがあるのだが……
確か、最近────

「あっ……あ───────っ!!」

「なっ、なんだ急にそんな大声出したらビックリすんだろっ!?」

思い出した!
おまじない!!
そうだ、アノ怪しいおまじないのサイトに手書きっぽい字で書かれてた『好きな人と仲良くなれるおまじない』アノ字だ!!

「ちょっと、このノートよく見せてください!」

「あっ……おいっ!」

私は先輩からノートを奪うと、パラパラとページを捲っていった。

見た目はなんの変哲もない大学ノート、一番最初のページには先輩の書いた一文だけ。

次のページも次のページも、特に何も書いてない。

だが──

「……アレ? コレって…………」

その次のページには、シャーペンで書いた様な薄い文字で『旧校舎2階、一番奥の部室へ行く』という一文が書いてあった。

「コレは、先輩が書いたんですか?」