職員室は2年生の教室と同じ階にある。
「で、ただのノートって言ってましたけどどんなノートなんです?」
「ホントに普通のノートだよ、見ればすぐわかる」
「普通のノートに……二万払ったんですか!?」
ありえない。
それはいくらなんでも……
「見た目は普通だが、それは仮の姿で本当はスゴい力を持ってんだよっ!!」
「はぁっ……落し物BOX、見当たらないですね」
職員室の前に来てはみたが、落し物BOXは見当たらなかった。
外に置いてあればすぐに確認出来たのだが、見たところそんなモノは無い。
「中ですかね?」
廊下側の窓が開いており、中をチラっと覗いてみると入口を入ってすぐの机の上に大きめなダンボール箱がある。
落し物BOXという白い紙が貼ってあるのが見えた。
「あっ、もしかして……アレ」
そして、箱の中になんとなくだがアレじゃないかというノートが見えたのだ。
いや、多分アレだ……
ただのノートに汚い字で予言の書ってマジックで書いてある、アレ。
逆にアレじゃなかったら、あんなもんを持つセンスの持ち主が他にもいる事になってしまう。
ともかく、今はそんな事よりとっととノートを回収する事だ。
私は職員室の扉をノックし、中へ入った。
「失礼します」
中では数人の先生が朝という事もあり忙しそうにしており、誰も私を気にとめる様子もない。
私はまっすぐ落し物BOXに向かうと、箱の中のノートを手に取った。
すると……
「落し物かな?」
横から声を掛けられた。
振り向くと、そこにいたのは……
二宮(にのみや)先生だった。
二宮 樹(いつき)27歳、独身。担当は世界史、美術部の顧問。
超が付く、イケメンだ。
可愛い顔とは裏腹に、均整のとれたその体つきは我が校の宝とも名高く、学校には密かにファンクラブがあり、その人気は生徒どころか生徒の保護者にまで及ぶ。
「えっと……はい……」
「そう、今週の落し物当番は僕なんだ、見つかったらここにクラスと名前を書いてもらえるかな?」
ヤバい……
眩しいくらいの笑顔が、私に突き刺さる。
「あっ……は、はい……そう、なんですか……」
よりによって、二宮先生の当番の時にとか、ついてなさすぎる。
私は再度、箱の中にあるノートに視線を移した。
マジックでなぐり書きされた『予言の書』の文字。
ご丁寧に、危険!絶対に開くな!だの呪とかいう文字が周りに書かれており、謎の男らしきど下手なイラストの横には「漆黒のソルジャー」とかいうワードが書かれている。