「で、それはドコにあるんです?」
「多分……教室だ」
「多分って……それに私は先輩の教室じゃ中に入れませんよ」
「そこはほら、お前がオレに貸していた事にして誰かに頼めば……」
「はぁっ……」
仕方なく、私はその案に賛同し先輩の教室、2年B組へと向かった。
「あっ、アノ……すみません」
そこでとりあえず、教室の入口にいたメガネをかけた優しそうな女子に声をかける。
「はい?」
「わ、私、一年の月見里って言います、犬神先輩にアノ……貸してるモノがありまして……」
「犬神君? まだ来てないみたいだけど?」
来てるといえば来てはいるのだが、まさかコアラのぬいぐるみになってしまったとは言えない。
「アノ……凄く大事なモノで、早く返して欲しくて……犬神先輩の机の中にありませんか?」
「大事なモノ? どんなモノなの?」
「えっと……予言の……」
と、言いかけて気づく。
だいたい、どんなモノなんだ? 『予言の書』って……
私が戸惑っていると、急にバッグの中から声がした。
「予言の書って書いてある、ただのノートだ!」
突然、バッグから頭を出した先輩が叫んだ。
「っ!?」
私は思わずバッグを2、3発殴り先輩を押し込む。
「あっ、アハハハハっ……ちょっと腹話術の練習をしてまして……ハハハっ……よ、予言の書って書いてあるノート……ありませんか?」
メガネの女子生徒は少し訝しんだ顔をしたがノートね、とだけ言い残して窓際の席へと歩いていった。
「ちょっと! なんで急に声出してくんですかっ!? それにただのノートってどういう事ですっ!?」
「オマエが困っているようだったから、手助けしてやったんだろうがっ!!? んなもん、死神だってなんだって大事な事はノートに書くだろうが!?」
「じゃあ、最初からノートって言ってください!!」
私たちがそんな言い合いをコソコソしている間に、犬神先輩の机の中を確認してくれた女子生徒が戻って来た。
「探してみたけど、犬神君の机の中は空っぽだったわ」
「えっ……」
空っぽ?
という事は、ノートは別の場所にあるという事?
ここまで来てまさかの紛失とか……
「あっ、そういえば……さっき誰のだかわからないノートがこの教室の前の廊下に落ちていて、それの表紙に確か、ナントカの書って書いてあったはず」
「ほっ、本当ですか!?」
「でも、名前が書いて無かったから職員室の落し物BOXに誰かが届けるって言ってたわよ」
「わ、わかりました、ありがとうございます!」
私は急いで職員室へと走った。