「──で、その予言の書ってなんなんですか?」
私と先輩は無事、学校へ登校するという任務を成功させる事が出来た。
校門前で生活指導に荷物検査とかされたら、一発でアウトだったが、なんとかその危機は免れたのだ。
そして、現在の我々の次の目標は『予言の書』の回収という事になっている。
しかし、未だそれが一体なんなのかはよくわかってはいない。
「半年以上前に、ある男から買ったんだ」
スポーツバッグから顔だけぴょこんと出して、先輩は言った。
「買った?」
「そうだ、二万円で……」
「二万円っ!?」
私は思わず、廊下の真ん中で思いっきり大きな声を出してしまい自分で自分の口を塞ぐ。
周囲の生徒の好機な目が痛い。
「……なんで、そんなワケのわからないモノを買ったんです!? 一体誰から?」
バッグに先輩を押し込むと、人目を忍んで誰もいない非常階段に行き、用心に用心を重ね小声で会話を続けた。
「アレはそう、月が眩しいほどに輝く夜だった……」
「前置きはいいから、早く話てください」
「学校の休み時間に、購買で声をかけられたんだ」
月、全く関係ない!
夜でもないし、昼間だし!!
「お昼のパンを買っていたら、後ろから突然声をかけられた……『予言の書』を買わないか?と……で、即購入した!」
「何でっ!?」
そんな、明らかに怪しいセールス。
普通なら無視するトコだろうけど、先輩はまんまとハメられたらしい。
「だって『予言の書』だぞ? 買うしかないだろ」
「普通は買いませんし、そんなの無視します! そもそも、何なんですか!? その『予言の書』って……」
「それに書き込むと、書き込んだ事が現実になる闇のアイテムだ!」
どこぞの名前を書くと人が死ぬ、みたいな?
にわかにはそんなモノ信じられない。
「でっ、先輩はその『予言の書』を使ったと?」
「ああ、そうだ……ちょっと意味合いは違うかもしれないが、おそらくオレがそれに書き込んだ事が今、現実となっているのだろう……恐るべき力だ……」
先輩はその『予言の書』とかいうのに「ぬいぐるみになりたい」とでも書いたというのか?
いや、意味合いが少し違うと言っているからもう少し何か違う事を……
ともかく私のおまじないのせいにしろ、先輩の『予言の書』のせいにしろ、どっちみちありえない話だ。
けれどもう、先輩がこうしてぬいぐるみになってしまっている時点で既にありえないのだから、何でもありなのかもしれない。