そうして、高校生になって初めての文化祭が始まった。

 出し物の当番はあらかじめ決めてあり、私は午後の後半を担当することになっている。なので、午前中もお昼も文化祭を回り放題になった。

 今日はひまりちゃんや明日香ちゃんとは当番が違う時間になっているので、一緒に回るのは明日ということになった。だからと言って私は一人でまわることはなく、裕一君とまわることになっている。昨日、帰り道で二人の開いている時間を照らし合わせたところ、一緒に回れそうなのは、一日目の午前中だった。——つまり、まさにこれから!

 どこに行けばいいか聞いたところ、私の教室に来てくれることになった。教室の中では午前の前半組がお客さんを向か入れるための準備をしている。あと少しで、校門が開き一般公開が始まる、それに向けて忙しそうにしている。邪魔するわけにもいかないので、教室から出て廊下で待つことにした。

「マオ!これからデート?」

「占いの衣装に着替えた明日香ちゃんが扉からひょこっと顔を出す。

「もうー、からかわないで、明日香ちゃん」

「ごめんごめん」

 反省しているように見えない返事を返した後、明日香ちゃんは誰かに呼ばれたらしく居室の中に戻っていった。

 実はこれはまさしくデートなのだ。明日香ちゃんにはからかわないでと返したが、否定はしていない。でも、やっぱり恥ずかしいから隠してしまった。あと、私が勝手にデートと思っているだけで、まだ付き合ってもいない。

「マオ、お待たせ」

 彼は時間通りに教室の前に来た。私の気を知らずか、いつもの通りの彼だ。まあ、逆に意識しすぎてしまうのも文化祭を楽しめそうになさそうだから、こっちのほうがいいのかもしれない。

「今日はよろしくね」

「うん」

 私と彼が合流したところで、開場を伝えるアナウンスが流れた。

「じゃあ、いこっか!」

 私たちは文化祭を十分に楽しむことができた。冷かされたりするのかなとか、こんなことも初めてなので色々勘ぐっていた。実際はそんなことは特に気にならなかった。二人で屋台のもの食べたり、出店を回ったりと学校を巡り巡った。

■■■

「ああ~、今日は楽しかったな」

 文化祭の最後にまわってきた当番、衣装に着替えた私は自分の持ち場で幸せを噛みしめていた。

 教室には四つばかりの膜で区切られた空間があり、その中の一つに私はいる。周りの目を心配することもないので、今の私は完全に外向きのかおをしていない。それでも、たまに来るお客に対して、台本の通りに対応をした。

 私の当番は今日最後の時間だった。お昼ごろは人がそれなりに来ていたというが、この時間になると、人がいない時間のほうが長かった。

 そろそろ、一日目が終わるな——と、今日の振り返っているところで、最後のお客さんが来た。

 一人はうちの制服を着ていて、もう一人は来場者のようだ。男女なのでカップルなのかなって思ったが、どうもよそよそしかった。目に見えて表情に出ているのはうちの制服を着た彼女の方で、彼の方は目には言えてないが彼女と変わらない感じだった。

「なにを占いますか?」

「えーと、友達運を」

「はーい!」

 台本に沿って接客をしていく、水桶を出したり、写真を取ったりとスムーズに行えるよう心掛ける。今回も失敗することなくできた。

 占いをやっている間、二人を見ていた。どうにも、彼が何か隠し事をしているようだった。私が勘を覚えたということは、恋関連だろう。こっそり、彼を占ってみることにした。本当の占いで。

 ——結果はビンゴだった、恐らく彼は何かを彼女に渡そうとしている。そして、ついでに占った彼の恋愛運は最高だった。今日、彼女に渡すものを渡す事ができたのなら、いい方向に物事は進む。

 早く伝えなければ、彼はまだ迷っている状態だ。すぐさま彼らを追った。まだ、彼らは教室のすぐ近くを歩いていた。それを見つけ、私は声を張る。

「渡すなら今日がいいですよ!いま最高に良い運してますから!」

 彼に伝えた私はすぐに教室の中に戻った。終わり間際と言っても、まだ私の棟本は終わっていない、もしかしたら次のお客さんが来ているかもしれない。

 いま、彼にやった占いはあまりよくないことだ、まず相手の許可も取ってない。でも、やってしまったのは仕方ない、私はやりたかったから。そんなこと言うと、相手の気持ちを考えられていないって怒られるかもしれない。

 それでも、私は恋に悩む人に魔法をかけられる魔女でありたい。それがマオであって魔女である私なのだから。