最近、弟が私と遊んでくれなくなった。いつもは実家に帰ってくると私がつかれたと言ってもやめてくれないほどなのに。特に最近は、誰かとよく連絡のやり取りをやっているみたいだし、昨日かわいい袋を捨てているのを見てしまった。これはついに、弟にも?と思い立った私は弟を誘ってご飯に行くことにした。

 「りく、一緒にご飯食べにいかない?」

 リビングでちょうどスマホをいじっている弟を見つけたので、声をかけてみた。

 「いいよ、お姉ちゃん。いつ行くの?」

 「明日とか、どう?」

 「明日ね、分かった」

 私の勘繰りは関係なく、弟と一緒にご飯を食べに行くことになった。遊んでくれなくなったとしても対応だけ見るといつもの弟だった。もしかして、これはただの姉離れだったのかもしれない。

 「どこのご飯食べに行くの?」

 「それはね、ここです」
 
 お財布から一枚の紙を取り出して、弟に見せる。弟は顔を近づけて紙の内容を読む。

 「実は前におまじないかけてあげた子から、もらったんだ」

 「そうなんだ、ちゃんと魔女やってるんだね」

 「魔女じゃないですぅ、魔法使いですぅ」

 「ごめんて、仮免取ったから魔法使いだもんね」

 
 弟の前ではほんとにねじが緩んでしまう。修業に行くまではここまでじゃなかった気がするが、修業のために家族と離れるようになってからひどくなっている気がする。
 
 目的地も見えてきたので、いつもの表情に戻す。

「いらしゃいませ、あ!来てくれたんだ」

「こんにちは」

「みんなに友達って言ってあるから、何でも好きなもの頼んで、もちろん弟君も」

「ありがとうございます」

 二人でお礼を言って、メニューを開く、さほど時間もかからずに二人とも頼むものは決まった。注文してから、弟に今日の本題を切り出した。

「陸、あのさ、昨日かわいい袋捨ててたよね?あれ何だったの?」

「クッキーの入ってた袋だよ」

「誰かからもらったの?」

「えっと、か、彼女だよ」

 あの弟が恥ずかしながら出して言葉に、私は打ちひしがれる。お姉ちゃん離れかって、何甘いこと考えてたんだ、やっぱり女か。私の心は乱れているが、お姉ちゃんらしくうわべを取り繕ってさらに質問する。

 「それって、同級生?」

 「ううん、高校3年」

 まさかの私より年上、だった。弟の彼女が私の想像のあるかに上を越えていく。

 「どこであったの?」
 
 「塾が同じだった」

 「いつからそういう関係になったの?」

 「映画を一緒に見に行った後の帰り道」

 私がおまじないをかけた人中で一人だけ、弟の言ったことに一致する人がいた。まさか、そんなことはないと信じて、弟に最後の質問をする。

「お名前は?」

「杉本美咲さん。お姉ちゃんもうこの話やめない?そろそろ、頼んだもの来るよ」

「うん、そうだね」

 弟の彼女は私がおまじないをかけた人だった。まさか弟の恋に関わることになるなんて思わなかった。何がこの恋愛が得意だよ、弟の恋も分からなかったのに。

「あ、お姉ちゃんも大好きだよ」

「うん、お姉ちゃんも」

弟はすごかった。弟のことですさんでた心が弟の一言で癒されていく。もうこれからは何があっても弟を疑わないと決めた。やっぱり私には弟が必要なんだ、ブラコンじゃないけど。