決まったらすぐに行動ってことで、さっそく僕と先輩は近くのスーパーに向かった。店内に入ったところでカートにかごを乗せる。僕はいつもそのまま入り口を通り抜けていた。なので、今日も売り場に向かおうとしたところで、先輩に引き留められた。
「佐藤くん、まずこれ見たほうがいいよ」
これと先輩が指さしたのは、入り口のところに張り付けられた広告だった。
「佐藤くんは一人暮らしだから、新聞取ってないでしょ?」
「はい、とってないです」
「だったら、ここで何が安いとかだけでもみとくといいよ」
そう言って、先輩はすたすたと売り場の方に行ってしまった。先に歩いて行ってしまった先輩を僕は追いかける。
「夏未先輩、今見たほうがいいって言ってませんでした?」
「私は、今日のお買い得品くらい頭に入ってるから、見なくても問題ないよ」
「すごいですね、先輩」
「さあ、早く買い物終わらせよ」
買い物中も僕は先輩から様々なレクチャーを受けた。美味しい野菜の見分け方だったり、買っとくと便利な調味料だったりを丁寧に先輩は教えてくれた。
「佐藤くんは何か食べれないものある?」
「特にないです。でも、トマトはできるだけ避けたい感じですね」
「じゃあ、トマトたくさん入れよっか!」
「え?でも、夏未先輩が作ってくれるなら、僕頑張ります」
「そんなことしないって、大丈夫」
ただ先輩にからかわれただけらしい。正直な話、先輩が作ってくれたものなら何とか食べれるような気も少しだけあった。
「こんなところでいいかな?」
先輩はかごの中にいれた食材たちと自分のスマホの画面を交互に見比べる。僕は今のところ先輩に何を作るかを教えられていないので、手伝えることはなかった。先輩も確認が終わったようだ。このかごの中に入っているもので、とりあえず必要なものはそろったらしい。
「買い忘れはないですか?」
「とりあえず、私は全部入れたかな」
「分かりました。僕はレジ行ってくるんで、あっちで待っててください」
先輩も財布を取り出したが、何か言う前に僕はさっさとレジの列に並んでしまった。先輩のことだからあのまま口を開けれたら割り勘くらいまではと粘られてしまっただろう。だからさっさとこちらに来てしまうのが一番良い選択にった。
レジを終え、生産を済ませてレジから離れると先輩は袋に詰めるところで待っていた。
「もー、半分くらいは出すのに」
「大丈夫ですって、僕は夏未先輩が作ってくれるだけで儲けもんですよ」
「ほんとうに?」
話ながらも買ったものをレジ袋に詰めていく。ものの入ったレジ袋は二つになった。どうしても持つって言っている先輩には軽い方を持ってもらって、僕たちは店をあとにした。
家に戻ると、時計の針はさらに進んでいた。買い物には1時間くらいかかっていたらしい。買ったものには冷凍のものも入っていたので素早く冷蔵庫に入れる。今まで飲み物しか入れてこなかったところに、食材が並んでいくのは壮観だった。
「私は、急いでご飯作るね」
「僕も、何か手伝いましょうか?」
「えっと、大丈夫かな?佐藤くんは勉強でもしてて」
先輩的にはいい感じにごまかせたと思っているだろうけども、これは戦力外通告であって、仕事を増やすなの意味がある。そのことを感じ取った僕は先輩の言葉に従い、邪魔をしないことにしないようにした。
最初のうちはスマホをいじってたが、他人が僕の部屋にいて台所でご飯をつくっているという状況が気になってきた。ちらっと台所を覗いてみると先輩はあれやこれと忙しく手を動かしていた。
一回気にしてしまったら、もっと気になるってのが人なのだろう。もっと、知覚で見たいという感情が湧いてきた。
「夏未先輩、そっち行ってみてもいいですか」
「いいよ、見てて楽しいとは思わないけどね」
先輩から許可も出たので、僕は立ち上がり台所に向かう。先輩は長い髪を後ろでまとめている。それが止まることなく動き回っているせいで常時揺れている。先輩の髪に気を取られていてたが、先輩の料理の手際に注意を向ける。これを見て自分で作るときに生かせたらと思ったが、うますぎると参考にならないということを思い知らされた。見てもよく分からなかったので部屋に戻ろうとしたところで、先輩に引き留められた。
「せっかく来たんだし、味見してよ」
先輩から渡されたお皿に少しだけよそってあるのを口に入れる。
「美味しいです」
素直に感想を送る、先輩も満更でもないように「ありがと」って返してくれた。このやり取りがなんだかムズムズしてきたので、僕はそれから避けるように部屋に戻った。何だろうこの感じはと首を傾げつつも、本棚から読みかけの本を取り出して、続きを読むことにした。ちょっと読み進めてところで、台所にいる先輩に僕は呼ばれた。
「これ、できたから机に持って行ってもらえる?」
「了解です」
先輩から受けた指示の通りにおかずなどを机に持っていく。僕が運んでいる間に先輩は僕と自分のご飯と汁物をよそう。先輩がよそってくれたものも机に並べたところで遅めのお昼になった。
食べるたびに、美味しいという僕を見て先輩は笑っていた。休日に誰かと一緒に食べるなんて久しぶりの事だったから、楽しくなってしまった。先輩と一緒ってのも大きな要因だったのだろう。だから、あんな言葉げこぼれてしまった。
「先輩の手料理を毎日食べれたら、僕は幸せですよ」
「え?」
最初のうちは自分の犯した罪の大きさに気付いていなかったが、時が経つにつれて事の重大さを理解し始めた。だらだらと変な汗が背中に流れる、何とかして話題を変えようと思ったが、考えるたびに沈黙の時間が広がり言い出しにくくなっていった。先輩も黙ったまま口を開こうとせず、黙々とご飯を口に運んでいる。
そのまま、静寂は続いていき、僕も黙ってご飯を食べ続けた。何とかしなければと思考を巡らせ続けたが、僕の頭では最適解を導くことができなかった。
「佐藤くん、まずこれ見たほうがいいよ」
これと先輩が指さしたのは、入り口のところに張り付けられた広告だった。
「佐藤くんは一人暮らしだから、新聞取ってないでしょ?」
「はい、とってないです」
「だったら、ここで何が安いとかだけでもみとくといいよ」
そう言って、先輩はすたすたと売り場の方に行ってしまった。先に歩いて行ってしまった先輩を僕は追いかける。
「夏未先輩、今見たほうがいいって言ってませんでした?」
「私は、今日のお買い得品くらい頭に入ってるから、見なくても問題ないよ」
「すごいですね、先輩」
「さあ、早く買い物終わらせよ」
買い物中も僕は先輩から様々なレクチャーを受けた。美味しい野菜の見分け方だったり、買っとくと便利な調味料だったりを丁寧に先輩は教えてくれた。
「佐藤くんは何か食べれないものある?」
「特にないです。でも、トマトはできるだけ避けたい感じですね」
「じゃあ、トマトたくさん入れよっか!」
「え?でも、夏未先輩が作ってくれるなら、僕頑張ります」
「そんなことしないって、大丈夫」
ただ先輩にからかわれただけらしい。正直な話、先輩が作ってくれたものなら何とか食べれるような気も少しだけあった。
「こんなところでいいかな?」
先輩はかごの中にいれた食材たちと自分のスマホの画面を交互に見比べる。僕は今のところ先輩に何を作るかを教えられていないので、手伝えることはなかった。先輩も確認が終わったようだ。このかごの中に入っているもので、とりあえず必要なものはそろったらしい。
「買い忘れはないですか?」
「とりあえず、私は全部入れたかな」
「分かりました。僕はレジ行ってくるんで、あっちで待っててください」
先輩も財布を取り出したが、何か言う前に僕はさっさとレジの列に並んでしまった。先輩のことだからあのまま口を開けれたら割り勘くらいまではと粘られてしまっただろう。だからさっさとこちらに来てしまうのが一番良い選択にった。
レジを終え、生産を済ませてレジから離れると先輩は袋に詰めるところで待っていた。
「もー、半分くらいは出すのに」
「大丈夫ですって、僕は夏未先輩が作ってくれるだけで儲けもんですよ」
「ほんとうに?」
話ながらも買ったものをレジ袋に詰めていく。ものの入ったレジ袋は二つになった。どうしても持つって言っている先輩には軽い方を持ってもらって、僕たちは店をあとにした。
家に戻ると、時計の針はさらに進んでいた。買い物には1時間くらいかかっていたらしい。買ったものには冷凍のものも入っていたので素早く冷蔵庫に入れる。今まで飲み物しか入れてこなかったところに、食材が並んでいくのは壮観だった。
「私は、急いでご飯作るね」
「僕も、何か手伝いましょうか?」
「えっと、大丈夫かな?佐藤くんは勉強でもしてて」
先輩的にはいい感じにごまかせたと思っているだろうけども、これは戦力外通告であって、仕事を増やすなの意味がある。そのことを感じ取った僕は先輩の言葉に従い、邪魔をしないことにしないようにした。
最初のうちはスマホをいじってたが、他人が僕の部屋にいて台所でご飯をつくっているという状況が気になってきた。ちらっと台所を覗いてみると先輩はあれやこれと忙しく手を動かしていた。
一回気にしてしまったら、もっと気になるってのが人なのだろう。もっと、知覚で見たいという感情が湧いてきた。
「夏未先輩、そっち行ってみてもいいですか」
「いいよ、見てて楽しいとは思わないけどね」
先輩から許可も出たので、僕は立ち上がり台所に向かう。先輩は長い髪を後ろでまとめている。それが止まることなく動き回っているせいで常時揺れている。先輩の髪に気を取られていてたが、先輩の料理の手際に注意を向ける。これを見て自分で作るときに生かせたらと思ったが、うますぎると参考にならないということを思い知らされた。見てもよく分からなかったので部屋に戻ろうとしたところで、先輩に引き留められた。
「せっかく来たんだし、味見してよ」
先輩から渡されたお皿に少しだけよそってあるのを口に入れる。
「美味しいです」
素直に感想を送る、先輩も満更でもないように「ありがと」って返してくれた。このやり取りがなんだかムズムズしてきたので、僕はそれから避けるように部屋に戻った。何だろうこの感じはと首を傾げつつも、本棚から読みかけの本を取り出して、続きを読むことにした。ちょっと読み進めてところで、台所にいる先輩に僕は呼ばれた。
「これ、できたから机に持って行ってもらえる?」
「了解です」
先輩から受けた指示の通りにおかずなどを机に持っていく。僕が運んでいる間に先輩は僕と自分のご飯と汁物をよそう。先輩がよそってくれたものも机に並べたところで遅めのお昼になった。
食べるたびに、美味しいという僕を見て先輩は笑っていた。休日に誰かと一緒に食べるなんて久しぶりの事だったから、楽しくなってしまった。先輩と一緒ってのも大きな要因だったのだろう。だから、あんな言葉げこぼれてしまった。
「先輩の手料理を毎日食べれたら、僕は幸せですよ」
「え?」
最初のうちは自分の犯した罪の大きさに気付いていなかったが、時が経つにつれて事の重大さを理解し始めた。だらだらと変な汗が背中に流れる、何とかして話題を変えようと思ったが、考えるたびに沈黙の時間が広がり言い出しにくくなっていった。先輩も黙ったまま口を開こうとせず、黙々とご飯を口に運んでいる。
そのまま、静寂は続いていき、僕も黙ってご飯を食べ続けた。何とかしなければと思考を巡らせ続けたが、僕の頭では最適解を導くことができなかった。