鏡の前で身支度をするリアンの顔は、まだあどけなさはあるものの、あの頃よりも大人になっている。
 ホームレスとして生活していた頃から、約二年。その歳月が、リアンの顔立ちを変えたのだ。
 変わったのは顔立ちだけではない。無論、背も伸びたし、声だって変わっている。十六歳になったばかりのリアンは、成長期真っ只中なのである。そして、変わったのは見た目だけではない。
 路上に建てた小屋で暮らしていたリアンは、今では教授が買った、立派な家で暮らしている。そして、変わったのはリアンだけではない。
  教授こと、ジョルジョバ.フィレンチも変わった。
 見た目が綺麗になった事もそうだが、大きく変わった事がある。ジョルジョバは、仕事をしているのだ。
 人の親になるという事は、その子供の手本にならなければならない。それをジョルジョバはちゃんと理解した上で、リアンを我が子にする事を望んだのだ。
 気になるのは仕事の内容だが、ジョルジョバは彼にしか出来ない事をしている。人に癒しと感動、その他にも様々な感情を抱かせるような仕事をしている。
 察しがいい者ならば、もう彼の仕事が分かったのではないだろうか。
 ジョルジョバは、彼の天職であるピアニストをしている。
 仕事を始めるにあたり、ジョルジョバにはピアニスト以外の選択肢はなかった。
 ピアノ教師ではなく、ピアニストに拘ったのだ。
 リアンに、ピアニストという職業を間近で見せたかった。それがどんなに素晴らしい職業であるかという事を。ピアニストになる事を望んでいるリアンに伝えたかったのだ。
 ジョルジョバの復帰に、彼を知る者達は歓喜に震えた。
 ジョルジョバは、定期的に暮らしている街にある会場でコンサートを開いている。