「愛してる」
その言葉を人生で使う回数は、どれくらいのものだろうか。
好きよりも大好きよりも重たいその言葉を、今どきの若い人達は簡単に口にしている気がするけれど。
大切で、他の誰でもない僕が守りたくなって、
一生を共にして、同じお墓に入りたい。
……少しだけ重たげかもしれないけれど
そんな全てをひっくるめた上でその言葉を使う回数なんて、いくらチャラ男やふっ軽女が粒揃いしている平成の世でも、少ないのではないだろうか。
その位重みを持った、繊細で、…まだ薄汚れていない言葉を。
今僕は、1人の女の人に伝えたわけで。
_ほとんど、無意識だった。
“ちょっと、泣きすぎたみたい”
困った様子で微笑んでそう言った彼女に触れたいと思った。
その頬を撫でる変わりに洩らしてしまったけれど、それは確かに。
僕の、自然に口から零れた本心だった。
___そうだというに
「…えっと…ありがとう…?」
君には微塵にも響かなかったみたいで。
どうやらその鼓膜はとてもとても頑丈に出来ているらしく。
…参ってしまうなあ。
「本気だよ、僕は」
本気なんだよ。そう瞳で語り掛けてみてみても、彼女にはまるで効果がないらしい。