そう考えお昼を食べ終わった後職員室に向かったが坂本先生は席を外していた。さっきも忙しそうだったし仕方ないだろう。と教室に向かって歩いているとちょうど探していた人を見つけた。廊下を一人、幾つかの教科書やノートを持って歩いている。次は移動教室なのだろうか。でも普通は友達とかと一緒に行くものだと思うが。まぁ俺の言えたことではないか。もう色々考えるのが面倒くさいので直接声を掛ける。
「あの〜すみません」
しかし無言で歩き出してしまったので追いかけながらもう一度声を掛ける。
「すみません」
だが歩く速度を速くされてしまう。更に追いかけてさっきよりも声大きくして話し掛ける。
「すみません!」
するとやっと足を止めて反応をくれた。
「無視されてるの分かりながら声掛け続けるとかキモいですよ」
とそれだけ言って再び歩き始める。
「ちょっと待って、話があるんだ」
振り向いて死んだ目で吐き捨てるように言葉を返される。
「何ですかナンパですか。それならもう間に合ってますけど」
「残念だけどナンパじゃないんだ。それでお願いがあるんだけど」
すると更に死んだ目で
「嫌です」
と強く言われた。何もそこまで否定しなくても。
「まだ何も言ってないじゃないか」
するとその死んだ目のまま更にテキトーなことを言われる。
「嫌です。というか聞きたくもありません。他を当たって下さい」
「そう言われても君にしかできないお願いなんだけど」
「何ですか」
聞くんだ。てっきり無視するのかと思った。
「部活に入って欲しいんだ」
「嫌ですけど」
と再び歩みを進めようとするので進路に移動して更に続ける。
「このお願いは君にしかできないんだよ。君以外の人で部活入ってない人居ないから」
するとようやく興味を持ってくれたようで質問してくる。
「どこで知ったんですか。それ」
「先生が教えてくれました」
そう言うと、はぁとため息をついて言い直される。
「どちらにせよ嫌ですけど」
「まぁ、話だけでも」
「尚更嫌ですけど」
そう言って歩き始めてしまったので言いたく無かった一言を掛ける。
「去年の県大会」
そう言っただけで彼女の頬は引きつった。
「あなた以外の生徒はみんな」
すると小さくしかしはっきりと強く
「黙りなさい」
とさっきのような死んだ目ではなく、威圧するような力のこもった目を向けられる。その覇気に当てられてしまった。いや強がる瞳から微かに感じた寂しさとそれを隠すものに魅了されてしまった。そして彼女を呼び止めることは出来ず、そのまま立ち去ってしまった。