最近、コンビをよく見る。瑠璃と天鬼のコンビだ。
休み時間は勉強だけしていたような瑠璃が、女子と連んでいる。これはどういう風の吹き回しなのか。聞けば昼食も、屋上で二人仲良く食べているらしい。お陰で付き合いが悪い。

異変に気付いたのは、小学生の頃だった。
女子には興味が無かった。それは俺にとって当たり前だったのだが、まだ思春期が来ていないだけだと思っていた。
五年生、プールの時間。自由時間だった。まだ夢精もしていなかったのに。
瑠璃を見ていると、勃起してしまった。プールサイドに上がればバレてしまうので、唇を紫にしながら収まるのを待った。瑠璃は震えながら泳ぐ俺を不思議そうに見ていた。

ネットで調べて、そういうことだと知った。どうやら俺はバイセクシュアルというものらしい。
それまで友人だと思っていた相手に恋愛感情を自覚するのは、何かと気苦労が多い。というのも、瑠璃はモテるのだ。容姿端麗の爽やかイケメンで、スポーツは苦手だが成績は学年トップ。当時から引っ切り無しに告白されていた。
本人はそれを苦にしているらしく、「見た目だけで告白するの、本当にやめて欲しい」と嘆いていた。
だが、こちらとしては気が気じゃない。もし瑠璃が心を開いてしまったら、と思うと、「瑠璃は誰のものにもならない」と俺自身に言い聞かせつつ、怯えていた。

教室では、ホモやゲイという言葉が蔑称として使われる。瑠璃に告白しようという気は起きなかった。下手に距離を詰めて今までの関係が崩れるなら、このままでいい。
瑠璃は何よりも、異性として好意を向けられることを恐れている。だから俺はチャらく振る舞うことに務めた。そうすれば瑠璃に警戒されずに、ずっと一番近い友達で居られる。筈だった。

あの仲良しっぷりは何なんだ一体。瑠璃に聞いても告白されたわけじゃないと言うし、それ以上追求しようとすれば曖昧にはぐらかされる。
あの緋色っていう女に弱みでも握られているのでは、とあらぬ妄想をしてしまう俺に自己嫌悪を覚えつつ、やり場のないモヤモヤは溜まっていく。