緋色との同居生活が始まって、一ヶ月が経った。
家の中が賑やかになったこと以外、特に変化は無い。忘れてた。あと一つだけある。
朝の食卓を四人で囲む。僕が生まれた時には母さんが死んでいたし、姉や妹もいなかったので、不思議な感じだ。
「最近、瑠璃くんとはどうなの?」
「どうって、何が」
「どこまで行ったのかな、なんて」
緋色の母さんは、やんわりと凄いことを言う。
「瑠璃、ちゃんと避妊はしろよ。まだ経済的に自立してないんだから」
うちの父さんはオブラートに包む気がない。「まだそんな段階じゃないよ」
「分からないぞ〜いきなり進展することもあるから、準備だけはしといた方がいい」
食卓は四人で囲んでいるが、まだ少し壁があるように感じた。いつか、本当の家族みたいに話し合える日が来ればいいな。

その日は唐突にやって来た。父さんと義母さんが、旅行に行くと言って帰って来ない。一泊するそうだ。謀ったな......
「瑠璃、しよ」緋色は天然というか、ド直球だ。
「演技じゃないよね?」
「え?」
「前、演技でなら好きでもない人とキスでもセックスでもできるって」
「演技じゃ、ないよ」
だから恥ずかしいんだ。
二人の初めては、覚束ないものだった。僕が尻込みするので、ほとんど緋色にリードして貰う形となった。
グチャグチャに気持ち良くなって眠るのは、初めてだ。その日は、久しぶりにゆっくり眠った気がする。
何より、目が覚めたとき隣に緋色がいる安心感。これは何物にも代え難い宝物だ。
「おはよう、緋色」窓から差し込む朝日がチラチラと、僕の部屋を照らしている。
「おはよう、瑠璃」