当初は演劇部の四人で初詣に行く予定だった。でも流石にあの二人と一緒にいるのは幸太郎もキツそうだし、脇役は脇役同士で行く事にした。
「並ばないの?」神社の裏手に座る幸太郎に、声をかけた。
「あの行列に並ぶのは勘弁。それに俺の願いは、神頼みじゃ叶わない。頼んだって叶わないだろうけどさ」
「それも、そうだね」幸太郎の想い人は瑠璃くんで、その瑠璃くんは天鬼さんを好いている。長年の幼馴染だが、友達止まりだ。
「言っちゃったら?」
訝しげに幸太郎が私を見上げた。「本気で言ってるのか?」
「ああ、本気だよ」
長い沈黙の後、幸太郎は重い口を開いた。「俺の気持ちが、同性に告白する恐怖が、お前に分かるか?」
初めて見る彼の怒気に、少したじろいてしまう。呼び方も、『夏目』から『お前』になっている。
それでも。「分からない。分かるわけがない。私は君が好きなんだから」
「はっ?」鳩が豆鉄砲を食ったような顔だ。比喩でなく実際に見る事になるとは思わなかった。
空気は冷たいのに、顔だけが熱い。「とっとと告白して玉砕してくれないと、私が困るの。早く砕け散ってよ」
「玉砕って......」
「告白が上手く行くと思ってるの?」
「それは......」
「未練タラタラなのを辞めて、私のために告白してよ」
あーあ、言っちゃった。告白というのは、終わってしまえば呆気ないものだ。
「分かった」
その声は小さかったが、力強いものが籠っている。
「新学期、始業式の日ね。私はもう告白したから、次は君の番」
幸太郎は下を向いている。顔が赤いのを見せたくないのかもしれない。
一月一日の空は、清新な空気の匂いがした。