喫茶Hesperusには猫がいる

「はい、一人です」

「ではこちらにどうぞ」


そして私は奥の席に案内される。
皮張りのピンとした固いソファーだけど、不思議と座り心地は良い。
そして顔をカウンターの方に向けると─そこには猫が鎮座していた。

(かわいい…)

ふかふかと毛深く、真っ白い大きな猫。
こちらの様子を気にすることもなく、欠伸をしながらカウンターに寝そべっている。これはすごく癒される。

でも……一つ、異変に気付いた。


(しっぽが…三つ?!)

いやちょっと待て、これは何かの見間違いではないか?
そう思い目をゴシゴシ擦ってもう一度見るが、やっぱりふかふかのしっぽは三つある。


「お冷やお持ちしました。ご注文はお決まりですか?」

目の前に水が運ばれてきて、私ははっと正気に戻った。

「えっと日替わりのナポリタンを…って、あの猫は飼ってるんですか?」

そう聞くと「えぇ」と言って頷く店員さん。

「うちで飼ってる猫ですよ。猫お嫌いでしたか?」

「いえ……」

「なら良かったです」


そう言って笑顔で会釈しながら、店員さんは去って行った。