喫茶Hesperusには猫がいる

私が住んでいるのは、東京の下町。
一応観光地ではあるが、そこまで騒がしい場所ではない。スカイツリーが遠くに見えるぐらい、適度に東京の中心部から離れているからだと思う。
私はこのゆったりした街の空気がすごく気に入っている。

…とは言え、まだ引っ越して数週間。
色々バタバタとしていたのであまり散策する気力はなかったけれど、せっかくなので色々見て回ろう。そう思い、街の中心にあるとある寺の方に向かった。

この寺は映画の舞台にもなった場所で、この街のシンボルになっている。
石畳の参道には、下町情緒あふれる風景が広がっている。名物の団子店や老舗の川魚料理店などが軒を連ねていて…まるで昭和にタイムスリップしたような懐かしい風景。

まぁ私は昭和を生きていないけれど…きっと昔から変わらない風景なんだろうなと、何だか少しノスタルジックな気持ちになる。


そして参道を抜けると─そこには数本の桜の木が立っていた。

(そっか…もう終わったんだな……)

まだ蕾の姿しか記憶に無いが、いつの間にか桜は散っていて新緑の葉が芽吹いていた。
何だか少し残念だな…
そんな後ろ髪を引かれる思いを抱えながら、角を曲がり路地の方向に歩いて行った。