喫茶Hesperusには猫がいる

私は目をパチクリさせながら、そのぜんざいのお椀を見つめる。

「白玉モッチモチですっごくおいしいです!」


思わずそう叫ぶと、店員さんは「だろ?」と得意気な表情。


「モチモチした白玉っていうリクエストだったから、白玉粉と豆腐を混ぜたんだよ」

「豆腐?」

「そう、水の変わりに豆腐で捏ねるんだ。するとモチモチした食感になる」
店員さん曰く、「白玉粉2;豆腐3」の割合がオススメだそう。


ほえーと関心していると、黒猫が「それは良かったわ」と。

「家内はモチモチした白玉が好きやったから、ありがとうな要望聞いてくれて。
 そんで家内は本当に来るんかいな?」

「ええ、いつも一時に来る筈ですよ。"猫のお客様"は」


時計を見ると、時刻は一時数秒前。
三秒前・二・一……と一時になった瞬間、カラカラと店のドアが空いた。

「すいません、一人なんですけど……」

そう言って入ってきたのは─白髪頭のご婦人だ。
線が細く、春に似合う淡い紫のカーディガンを着ている上品なご婦人。


(あの人……?)
黒猫に耳打ちすると「そうや」と。

「あれが家内や」と言って、そのご婦人を見つめている。「あのカーディガン、まだ持っとったんやな…」とも言いながら。