喫茶Hesperusには猫がいる

すると「おまたせ」と店員さんがお盆を抱えてこちらにやってくる。

「リクエスト通り"関西風ぜんざい"できましたよっと」

そのお盆の中には─つぶあんの暖かい汁の中に浮かぶ数個の白玉。まさに"関西風のぜんざい"だ。
見た目からして美味しそう。


「そうこれやこれ!」

猫はピヨンとカウンターに飛び乗って、そのぜんざいを手で差している。


「えっと君…時間は大丈夫?仕事中?」
そう店員さんは私に向かって問いかけてくる。

「いえ二時から就職の面接で…ってあの、立石までどれぐらいかかります?」

「こっからだったら…高砂まで歩けば、二十分もあれば余裕で着くと思うよ」

「あぁ、じゃあまだ大丈夫です」

「だったらお礼にこれ食べていかない?」


目の前に、こんな美味しそうなものがあって断るわけがない。
私は「いただきます!」と勢いよく返事をした。


そしてお椀の中の白玉をスプーンで掬い、口に入れた。
口に入れた瞬間─私は思わず固まった。

「どうした?」
マオンが問いかけるが、私はプルプルと口を震わせることしかできない。

そしてようやく白玉を飲み込んで─この一言がでてきた。


「やばい……おいしい……」