体育祭の日、翔子は記録係のテントで陸上のタイムを書いていた。

「ショコタン!」

 声がしたので向くと、ひまりがいる。

「今日はね、ショコタンにサヨナラを言いに来た」

「えっ?」

「…あのね、実は」

 今月いっぱいで退学し、理一郎と挙式するのだと言う。

「英美里からいろいろ聞いた。ショコタンがいちばん怒ってたって…ごめんなさい」

 入籍は八月に済ませたこと、来月には理一郎の転勤で福岡に引っ越すこと、さらに、

「今ちょっと生理止まってて…多分妊娠してるかも」

 翔子は苦笑いした。

「展開めっちゃ早過ぎるわ」

「だから国立には見に行けないかも」

 ひまりは翔子に握手を求めた。

 翔子は戸惑いながらも、それを受け入れた。

「翔子ありがと。でもね、ショコタンやみんなと過ごせて私はしあわせだったよ」

 翔子は無言で、ひまりの手をたまらず引っ張ると、ひまりの肩を借りて人目も憚らず号泣した。

「ちょっと…まるで私が戦争に出征でもするみたいじゃない」

 翔子ったらよく笑うしよく怒るけど、よく泣くよね…とひまりは翔子の髪を撫でてから、

「もう、泣かないでね」

 それから少し話して、二人は別れた。