クラス替えが行われた三日後、高校生活二年目は順調に進んでいるように思えた。
今朝も日課である身長の測定を双子に手伝ってもらい、また1ミリ伸びていたことを悔やみながら電車に乗る。部活の朝練があり、早い時間なので車両内は人が少なかった。

入り口付近で立っていると暫くして乗り込んできた男の子と目が合った。


「あ、」

「一ノ瀬さん、おはよう」


長い弓袋を持った藤堂くんはそれが電車の天井にぶつからないように気を付けながら軽く手を振る。
早朝からあんなに爽やかな笑顔を振りまけるって、一種の才能だなぁ。


「藤堂くんも朝練?」

「そう、お互い新学期始まったばかりなのに忙しいよね」


部活の朝練があることや家の最寄り駅が近いことからこうして電車で彼と会うのは一年の時からよくあった。
彼の言葉に同調を示しながらも心の中で「タイムリーだな」と呟く。

それは昨日の夜の話だった。


昨夜、ベッドに入ったところ突然香耶から連絡があった。
「今から電話していい?」というメッセージに返事をすると直ぐに通話が掛かってきた。

その通話先で彼女から言われた言葉に私は目を丸くする。


「え、今なんて」

《だからね、私今年は頑張ろうと思って》


藤堂くんのこと、彼女はそう告げた。