昇降口の前に貼られていたクラス替えの用紙に目を通した香耶は安堵したように息を吐いた。
「よかった。由奈ちゃんと一緒だ」
「うん、今年一年も宜しくね」
すると同じクラスの中に見覚えのある名前を見つけて隣にいた香耶の肩を叩いた。
「香耶、藤堂くんも一緒だよ!」
「う、うん……」
嬉しそうに頬を赤く染めた彼女に私まで嬉しくなった。良かった、今年もいい一年になりそうだ。
早速新しいクラスに入ると教室内にいた生徒の視線が一斉にこちらを向く。
あぁ、この感じ久し振りだなあ。嫌でも目立ってしまうこの高い身長は初めて見る人からは物珍しそうな視線で見られることが多い。
それと一緒で、
「おい、樋口さんだ」
「やった! このクラス当たりじゃん!」
美少女ぶりに学校内でも人気の高い香耶と同じクラスで喜ぶ男子たちの声もあちこちで上がっている。その声が不快なのか、私の背中に隠れた香耶に複雑な顔を浮かべた。
そんな教室に入るなり目立っていた私たちに声を掛ける生徒が一人。
「一ノ瀬さん、今年も同じクラスだね」
「あ、藤堂くん」
爽やかな空気を纏った藤堂くんは気軽に私たちに挨拶をしてくれた。
香耶に負けないくらい肌の白い彼の微笑みに周りの女子がほうっと甘い溜息を落としたのが分かる。
「樋口さんも。今年もよろしくね」
「っ、うん」
さっきまで男子の視線に怯えていた香耶が彼の登場で笑みを取り戻した。その微笑ましい会話に私まで心が温かくなった。
しかし学園のマドンナと美少年に挟まれている私の場違い感が凄い。それに藤堂くんのお陰か更にクラスの視線を集めているような。