彼の言葉に頷くとなんてことないように笑う。


「あれは俺も馴れ馴れしかったからさ。それに樋口さん、あんまり男子と絡むのとか苦手そうだなって後から気付いたから俺も謝りたいと思ってたよ」

「……苦手なことは変わりないけど」


そう、苦手だし嫌いなことに変わりはない。だけど何故だか藤堂くんとも仲が良いみたいだから利用させてもらう。
逸らしていた視線を戻すと彼が不思議そうに首を傾げた。その何でもお見通しって顔、本当ムカつく。


「テスト明けの日曜日、暇だったらちょっと付き合って」

「……それって、デー」

「トじゃないから。勘違いしないで。あと由奈ちゃんと藤堂くんも来る」

「一ノ瀬さんと」


美弦？と藤堂くんを下の名前で呼んだ彼からそれなりに親しい関係であることが垣間見れる。
二人の顔を思い浮かべただろう彼が「変わった組み合わせだな」と含み笑いを浮かべた。


「いいよ、何か良く分からないけど。それで樋口さんが喜ぶなら」

「……」


きっと私が何を企んでいるのか、この人は気付いている。
だからあえて何も言わなくても分かるはずだ。


「（やっぱりこの人、苦手……）」