アオハル四重奏

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人通りが少ない校舎の裏で身を潜めて待っていると、そこへとある人物の影が落ちる。
男の手には一枚の紙切れが持たされていた、


「樋口さん、来たよ」


辺りを見渡して私を探す八神くんを確認すると、私は壁の影かた姿を現した。


「そんなところに隠れてたんだ。急に呼び出してどうしたの」

「……」


由奈ちゃんと約束した通り八神くんをWデートに誘う為に下駄箱に手紙を入れるという古典的な方法でここまで呼び出したのはいいけれど。
実際に話したことも少ないのにいきなり誘うとか、どうなんだろうか。


「(それにこの人に対してあまりいい印象ないし)」


進級して直ぐぐらい、軽い態度で絡んできた彼に嫌悪感を示したのは記憶に新しい。
だから由奈ちゃんに彼が気になるって言われた時は驚いたし信じられなかったけど……

だけど彼女の話を聞いて彼にも優しい一面があることを知った。球技大会の日も一番初めに由奈ちゃんを助けにいったのは彼だったから。
由奈ちゃんが好きなら私はそれを応援するしか他にない。


「話あるんだけど、その前に一つ謝らせて」

「ん?」

「……この間は勝手に怒ってごめんなさい」

「もしかして俺に『嫌い』って言ったこと?」