と、
「すみません」
不意に後ろから声を掛けられて振り返る。
するとそこに立っていたのは初めて見る男の子で、思わず目を大きく見張った。
「え、私?」
「そう、これ落としてない?」
「あ!」
彼が手に持っていたのは私のパスケースだった。確認すると鞄に付けていたものが何かの拍子に外れてしまったようだ。
ありがとうございますとお礼を言って受け取るとその男の子は爽やかな笑みを浮かべた。
スラッとしたスタイルに日に照らされて輝く茶色の髪。
でもそんなことよりも……
「じゃあ」
「あ、はい」
そう言って落とし物を拾ってくれたその男の子は颯爽と私の隣を抜けて校舎へと向かっていった。
その場と立ち尽くしていた私たちは暫くして顔を見合わせる。
「格好いい人だったね」
「うん、というか……」
そう、私たちが今立っているのは校門を抜けた先にある長い階段の途中だった。つまり私の後ろに立っていたさっきの男子は私よりも下の段にいたことになる。
それなのに私と目線の高さがそう変わらなかったのだ。
「身長高かったよね。ちょっと吃驚した」
香耶の言葉に静かに頷いた。同世代であんなに背が高い人、初めて見たかもしれない。
だからか分からないけど、ちょっとだけドキッとしてしまった。