「前も言ったかもしれないけど、違うなら違うって言った方がいいと思う」

「っ……」

「大丈夫じゃないのに大丈夫って言ってたら、いつか大丈夫じゃないときに自分じゃ気付けないから」


手に持っていた消毒液を床に置くと、彼は真っすぐに私のことを見据えた。


「今ここには俺しかいないし、正直な気持ち話してもいいんだよ」


怖い、この人の有無を言わせない強い瞳が。
どんな言葉も受け止めてくれそうな包容力が。

ずっと奥に秘めていた本音が引きずり出されるような、そんな感覚。

この人と向き合うのが、凄く怖い。

でも、


「ふっ、」


本当に怖いのは、ずっと自分の気持ちに嘘を吐く自分だ。


「怖かった……みんな私ばかり狙ってきて」

「うん」

「香耶や他の女の子は守ってもらえるのに、私はそんなことなくて」


本音を吐露するのと同時に涙が目から溢れ出してきた。嗚咽を上げながら話し続ける私を、彼は優しい目で見守ってくれていた。


「本当は、もっと女の子らしくしたい。でも、昔それで男子にキモイって言われたことがあって」

「っ……」

「それから女の子らしくするの怖くなって」


女々しいところを見られたらそれすら拒絶されてしまうんじゃないかと思っていた。