「八神くんたち試合終わったの?」

「そう、優勝したよ~」

「え~、その試合見たかったなあ」


バスケに参加していた八神くんと藤堂くんが戻ってきてあっという間に人に囲まれていた。
そういえば香耶も藤堂くんの試合見に行けないのショック受けていたっけ。

バスケが優勝したのであれば次の試合は責任重大だな。


「(ちょっとお腹痛いけど)」


あと一試合ぐらいなら。


「由奈ちゃん、次だって」

「あ、うん」


ぼおっとしていた視界が香耶の声でハッキリとする。それと同時に藤堂くんの顔が視界に入った。
思わず反らしてしまった視線。変に意識してしまい、恥ずかしい思いが込み上げる。

そんな気持ちを遮るようにコートへと脚を進めた。

多くのギャラリーに見守られることになった決勝戦。うちのチーム初っ端から相手チームから3人アウトを取られ、劣勢に立たされていた。
香耶を守る為に集まっていた男子たちを中心に狙われ、残った中で相手チームのボールを取れるのも数人となった。


「(まずいな……)」


ここまで数回の試合をこなしていたこともあり、体調不良と伴って体力が限界に近付いてきていた。


「あとはでかい女だけしとめたら終わりだ!」


相手チームからそんな声が上がり、攻撃のターゲットが私に向けられたのが分かる。
汗が目に入りぼやけた視界の中、剛速球が私に向かって飛んでくるのが見えた。

その瞬間、急に脚が言うことを聞かなくなった。