私には昔からのコンプレックスがある。
それがこの女の子にしては高すぎる身長。

小学生の時から止まることなく成長し続けた私の体は同じ歳の男子にも負けない身長となっていた。


いつもよりも遅めの電車に乗って高校の正門にまで来た私は視界に入った小さな背中に向かって駆けだした。
そして、


「かーや! おはよう!」

「わっ、由奈ちゃん?」


その背中に抱き着くと鈴が鳴るような声で驚いたように後ろを振り返る香耶。
私と同じ高校二年生で、そして一年生の時にクラスが一緒だった私の親友だ。


「吃驚した。由奈ちゃん今日遅いね」

「うん、朝練がないから。香耶も遅いね」

「実は昨日、クラス替えが怖くて眠れなくて……」


大丈夫かな、と目元を潤ませてこちらを見上げる彼女。その姿に私だけではなく、周りにいた男子もハッと心を奪われた。

香耶こと樋口香耶は誰もが認める美少女だった。小柄な体にふわふわに柔らかい長い髪、フランス人形のように白い肌に黒目の大きな瞳。
その全てが女の子の代表で、守りたい女子代表だ。

背が高くて髪も短い、男勝りな私は正反対だ。


「大丈夫だよ、次のクラスだって仲良い子見つかるよ。前のクラスだってそうじゃん」

「あれは、由奈ちゃんがいたから。由奈ちゃんと離れたらどうしよう」


心配性な彼女が落とした溜息に「私も離れるのは嫌だけどさ」と慰めの言葉を掛けた。