部長の掛け声と共に部活の休憩に入る。中学の時から始めたバレーボールを今でも続けている私は夏の大会に向けて練習に励む日々が続いていた。
そもそもバレーを始めた理由はこの身長を少しでも活かせないか、と思ったのと中学入学時にバレー部からの勧誘がしつこかったからだ。


「(あ、スポドリなくなっちゃった……)」


休憩の間に自動販売機で買ってこようと体育館を後にする。
初夏の日差しに照らされて目を細めた。暑いな、熱中症になりそうだ。

一番近い自動販売機に向かうと視界に見覚えのある人影が移り、思わず足を止める。


「あ、一ノ瀬さん」

「ど、ども」


同じく飲み物を買いに来ていたのか、自動販売機にお金を投入している八神くんと鉢合わせした。
彼は視線は前に向けながら「暑いねー」と微笑んだ。


「部活中? バレーだっけ?」

「う、うん。八神くんは?」

「この後カラオケ行くんだけど友達が先生に捕まってるから暇潰してる」


ゴトンと音を立てて缶ジュースが取り出し口に落ちる。高い背を屈めてそれを拾うと「ん」と自動販売機を開けてくれた。