突然割り込んできた声に私も香耶もぎょっと顔を歪めた。
教室の窓から廊下に顔を覗かせた八神くんが藤堂くんのことを呼び止めたのだ。


「今度クラスの親睦会するからさ、全員に参加するかアンケート取ってんだ。これ」

「そうなんだ、ありがとう」

「来いよー、絶対」


絶対か、と困ったように微笑んだ藤堂くん。意外、ここの二人って仲良かったんだ。でも並んでみると画面の華やかさが半端ないな。
すると八神くんの視線はこちらに向けられ、なるほどと言った様子で両手を合わせた。


「今から委員会? 頑張って」

「う、うん」

「あれ、樋口さんも?」

「っ……」


八神くんに声を掛けられ、怯えたように後ろに下がる香耶。見たからに八神くんみたいなタイプ苦手そうだもんな。
彼女の為にも早く解散した方が良さそうだと判断し、二人に別れを告げて委員会が行われる教室へ藤堂くんと向かう。

暫く進んで後ろを振り返ると帰る香耶の後ろ姿が見えてほっとする。
そして藤堂くんの方を見て「ごめんね」と、


「藤堂くんも不運だったね、体育委員なんて」

「まあ、凄く嫌ってわけじゃないし誰かがやらないと駄目だし」

「そっか」


藤堂くんは私と似たり寄ったりな考え方なのを知って何処か安心した。
しかし彼はそれに続けて「でも」と呟いた。


「今は、少しラッキーだったなって思ってるよ」

「え?」


私と同じくらいの高さの彼の目線がこちらを向いた。
目が合うと彼はにこやかに微笑んで、そして何事もなかったかのように歩き出したのだった。