彼女がまた笑った。まるで酔っ払っているみたいに。

今まで酒の席でだって、こんなにふにゃふにゃになった榊さんは見たことがない。キスでこんなになっちゃうなんて、可愛すぎる!

そうだ。結婚式を急いで決めよう。式場が決まらなくても、なるべく早く籍を入れて一緒に住もう。そうしたら……。

ふたりの生活を想像したら、一気にやる気が湧いてきた。

「榊さん。さっさと食べて、探しましょう」

相変わらずくすくす笑っている彼女を急かし、ケーキを大きく切ってほおばる。それを紅茶で流し込む俺を見て、彼女がまた笑った。

でも、どんなに笑われてももう何でもない。彼女が「好き」って言ってくれたから。俺のそばで安心していてくれるから。

それに。

俺に寄り掛かってくすくす笑っている榊さんをそっとながめて満足感に浸る。

(こんな姿、他人には絶対に見せられないな)

これこそ本当の秘密だ。誰も見たことがない、俺だけが知っている榊さんの秘密。

「幸せになりましょうね」
「んー」

またくすくすと笑って、榊さんが頷いた。俺は大急ぎで残りのケーキを飲み込み、気合いを入れてパソコンに向かった。



-----------------おしまい