ねえ、俺のお嫁さんになってよ。
 タカオの声が優しく響く。
 そうできたらどんなにいいだろう。
 あいまいに笑いながら菊理がダメだよ、と、返す。
 既に婚約者がいる、と、即答する事ができなかった。
 菊理は、既にタカオを受け入れてしまっていた。
 一晩だけの事になど、できるはずが無い。
 何もかも忘れて、タカオの腕に抱かれていたかった。
 けれど、嵐は永遠には続かない……。
 嵐が止んだら、太陽が出たら、青い空が出たら、言わなくては……。
 そう、菊理は思っていたのに。
 嵐は、朝になっても、昼が過ぎても、去らなかった。