菊理は、遠ざかっていく意識の中で、自分がゆらゆらとゆらめきながら、暗い水底へ落ちていくのを感じていた。

 わずかに上の方にあった明かりも、今はもう見えない。

 変わりに、タカオと自分が燐光につつまれて、あたりをほの明るく照らしているのがわかった。

 とりまく水は昏く、どこまでも続いている暗闇の淵があるばかりだった。



 タカオに抱かれながら、深く、深く、暗く、光も届かない深い水底へ。
 鮫に捕食された魚のように、血煙が靄のようになり……菊理は、堕ちていった。

(終)