気になる子が居た。

ボクの幻覚だろうか?

彼女にはきつねの耳としっぽが生えていた。

でも誰も不思議に思わない。ボク以外の誰も。

神様や妖怪のきつねは知らない。

だけどつぶらな瞳が愛くるしい北きつねなら、幼い頃映画で深く堪能した。

彼女の黒目がちな眼にどきりとする。

北きつねの亜人なのか?

しっぽときつね耳がビクリと揺れる。

そんな彼女を見つめていたら声をかけられた。
「私の顔に何か付いてる?」
ボクにきつね耳としっぽがバレていないと判断した様だ。

「コスプレしてるのか?」とボクが言い終える前に彼女の指が唇に触れた。

「屋上につづく階段の踊り場に行こう」と無理矢理誘われた。

スカートから出てるしっぽの仕組みに興味を覚えたボクは、ついてゆく。

やがて階段の踊り場で、くるりと振り返った彼女がこう言った。
「私が何に見えるの?」
北きつねの耳としっぽを操るコスプレイヤー
と言おうとしてその眼に囚われる。

「北きつね」っとボソッと言った。

彼女は「※ジーザス」と顔を手で覆いながら天井を仰ぐ。

「悪者じゃないからさ」見逃してと言われて、咄嗟に言葉がはやった。
「ボクが悪者かどうか見守ってやるから」

付き合ってくださいとは素直に言えなかった(笑)


※「神よ本当に見守ってくださってるのですか?」という意味