人工の建造物。

人の温もりのするどこか素朴な懐かしさを感じる建物。

「あの中で雨宿り出来たら──」

だが、それは無理な相談だった。

その建物はとても小さくて人間は入ることができない。

そう、その建物こそ謎の爺さんが話していた《社》だったのだ。

その《社》は生い茂る木々の間に隠れるように、ひっそりと佇んでいた。

誰も訪れる者とていないのだろう。

供えられた花はとうの昔に枯れ果て、社にも所々苔が生えている。

小さな石を規則正しく組み合わせた石垣の上に、

木造の社はきちんと祀られていた。